アグリテック領域で活用されるAR/VR技術とは?農業現場での活用事例を紹介

Technology
2021.05.28 | Motto AR編集部

従来からの農業手法にAIやIoTといったテクノロジーを活用することで、就農者による作業の自動化やシステム化が進み、キツい仕事は楽になり、汚くなるような作業や危険な処理などは機械にまかせることができるようになってきています。今回は、そんな「アグリテック」のなかでも、ARやVRの活用が期待される領域について、具体的なソリューション事例をもとにお伝えします。

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「キツい」「汚い」「危険」

これらは3Kと呼ばれ、労働環境・作業内容の過酷さを表した造語です。少し前までは農業と聞くと、そんな3Kのイメージが定着していたものですが、ここ数年でその実態は大きく変わっています。

従来からの農業手法にAIやIoTといったテクノロジーを活用することで、就農者による作業の自動化やシステム化が進み、キツい仕事は楽になり、汚くなるような作業や危険な処理などは機械にまかせることができるようになってきています。

今回は、そんな「アグリテック」のなかでも、ARやVRの活用が期待される領域について、具体的なソリューション事例をもとにお伝えします。

なお、ARやVRについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご参照ください。

ARとは? VR・MR・xRとの違いやビジネスでの活用を解説!!
【入門編】VRとは? 何ができるか解説! ARとの違いも

おさらい:アグリテック(AgriTech)とは

アグリテックとは

アグリテックとは、Agriculture(農業)とテクノロジー(Technology)を掛け合わせた造語です。海外では、Agtech(アグテック)やFarmTech(ファームテック)とも呼ばれています。

また農林水産省では、このアグリテックを「スマート農業」という言葉で説明しており、ロボットやICTを活用して超省力・高品質生産を実現する新たな農業のありかたを推進しています。

アグリテックが注目される理由

このアグリテックが注目されている背景には、大きく以下2つの要因があります。

担い手の高齢化と農業従事者の減少

日本は課題先進国として世界に先駆けた超高齢社会に突入しています。それにあわせて各業界の労働の担い手、特に農業のような一次産業の担い手も高齢化が進み、あわせて新規就農者の減少も続いています。

だからこそ、少ない人数で従来の農作業を実現できるように、テクノロジーの活用に期待が高まっているのです。

熟練就農者の技能承継

労働人口のほかにも、熟練農家が長年培ってきた農業のノウハウを次世代に継承することも、深刻な課題のひとつです。しかも、技能承継しようにも、次世代の担い手がいないため、やりようがありません。

そこで注目されているのが「データ農業」です。後述しますが、圃場の状態や日々の作業をセンサーなどでデータ化し、「誰がどんな作業を、いつ、どのように実施しているか」という農作業の5W1Hを可視化することで、ロボットやシステムが代替できるようになることが期待されています。

注目のアグリテック領域

注目のアグリテック領域

次に、具体的なアグリテック領域のソリューションについてみていきましょう。

圃場のセンシング

代表的なアグリテックサービス領域のひとつが、圃場(ほじょう)のセンシングです。農作物を育てる圃場に、物理的なセンサーを設置して、農作物がさらされる環境のデータを取得して生育の自動化やサポートを行うような仕組みです。

たとえばNTT東日本が提供する圃場センシングソリューション「eセンシング For アグリ」では、以下のように圃場に設置したセンサーネットワークとオンラインストレージサービスを活用することで、圃場を可視化し、農家の生産性向上を支援しています。

ドローン活用

ドローンの活用も、有名なアグリテック領域のひとつです。主な用途は、農薬の散布。広大な敷地に農薬を散布する場合、産業ヘリなどと異なり軽量でコンパクトなため、農薬の積み下ろしが省力化でき、また操縦事故などのリスクなく散布することができます。小回りも効くため、中山間などでの散布も問題ないでしょう。

ヘリを使うほどではない規模の農業においても、わざわざ人が動かずとも散布ができるため、同様に農薬散布にともなう重労働から解放されることになります。

以下は、農機メーカーとして世界シェアをほこるクボタによるドローンソリューションの動画となります。

収穫ロボット

農業でもっと重労働のひとつとされているのが収穫作業です。この収穫作業を人の手から解放してくれる「収穫ロボット」も、高齢化が進む日本だからこそ大きく期待されている領域のひとつです。

たとえばAI技術(ディープラーニング)とロボットアームで野菜の自動収穫を実現するinaho社では、以下の要領で、従来では機械化が難しいと考えられていたアスパラやトマトなどの「選択収穫」が必要な野菜の収穫を自動化しています。

▼関連リンク▼
株式会社スマートロボティクスが、AI×自動走行型アームロボット「トマト自動収穫ロボット」の実証実験をビニールハウスで開始!

植物工場

ここまでは従来からの農作業をサポートする領域としてのアグリテックでしたが、まったく別の生産アプローチとして注目されているのが植物工場です。植物工場とは、土の代わりに培養液を使って作物を育て、日光の代わりにLEDを使って光合成をうながすクローズドでの作物生育環境です。温度や湿度など、あらゆる環境変数がデータとして管理される、まさに植物の工場と言えるシステムです。

災害などの天候リスクが多い日本だからこそ、環境に左右されない植物工場への期待も大きいと言えます。

デジタルプラットフォームでの食品流通

最後に、収穫した農作物を流通させる際に期待されているデジタルプラットフォームです。スマートフォンが一般消費者に普及してきたからこそ、従来のようなスーパーでの買い物に限らず、ECサイトのようなプラットフォーム上で気軽に生鮮食品を購入できるようになりました。

たとえば産直通販サイト「食べチョク」では、消費者が生産者から野菜などを直接購入ができるようになっています。生産者にとっては、自分たちが作った野菜の流通先が増える、貴重なサービスだと言えるでしょう。

ARやVRを活かした国内アグリテック事例

最後に、アグリテックのなかでもAR技術を活用した国内サービス事例をご紹介していきます。

農林水産省(農業・農村VR体験コンテンツ)

まずVR活用事例として、農林水産省が実施しているのが「農業・農村VR体験コンテンツ」です。こちらは農業・農村についての理解を深めるために提供されており、普段なかなか見ることのない土地改良施設や農村の風景などを、VR映像で見ることができます。

具体的には360度動画がYouTubeにアップロードされており、パソコンの対応ブラウザで見ることで、任意の視点にスクロールさせながらコンテンツをチェックできます。また、VRゴーグルを使うことで、より現実に近い形で体験することができます。以下がサンプル動画となります。

農業・農村VR体験コンテンツ:農林水産省

株式会社プラスプラス(Smart3tene)

株式会社プラスプラスが提供する「Smart3tene」は、仮想空間に農園を再現することで、収穫をシミュレーションできるサービスです。

AIの機械学習アルゴリズムを使って、樹木や果実、野菜、季節といった多様な要素を大量に生成した「全天候型バーチャル農園環境」を精細に再現しており、ロボットを用いた収穫のシミュレーションが行えます。現実環境のデータを使ってシミュレーション環境を構築するという観点で、デジタルツインの農業領域特化版と捉えてもよいでしょう。

デジタルツインについては、以下の記事もご参照ください。

デジタルツインとは?VRと何が違う?国交省による「Project PLATEAU」など個別事例も解説

株式会社IHIアグリテック(日本)

最後は、少し特殊な使い方の事例です。農業用機械などを開発するIHIアグリテック社では、農業用の大型機械の展示にARを活用しました。具体的には、2018年7月開催の国際農業機械展において、通常では展示が難しいジャイロテッダー(転草作業機)やハイドロプッシュマニアスプレッダ(堆肥散布機)などの大型製品をAR展示したのです。

来場者は空間にタブレットをかざすことで、限られた空間であっても、作業の方法を具体的な動きとともに確認できるようになりました。物理的な空間にとらわれずに視覚上の問題解決をするという点で、ARをうまく活用した事例となります。

株式会社IHIアグリテック

5Gで普及が期待されるアグリテックARとVR

以上、今回はアグリテックの概要や具体的なソリューション領域について説明と、ARやVRで実際に活用された事例をご紹介しました。

まだ絶対的な事例数は少ないものの、5G環境の整備が進んできているからこそ、これからの利用促進が期待されると言えるでしょう。なお、5Gの普及によるVR市場への影響については、以下の記事もご覧ください。

VRの市場規模は5G登場でどう変わるのか?2020年の業界動向と、2021年以降の市場を予想

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