ARは製造業をどう変えるのか?製造現場で活用できるARソリューションをご紹介

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2020.12.23 | Motto AR編集部

「拡張現実感」と呼ばれる、AR技術を活用したサービスが、ゲームなどを通じて一般消費者の間でも目に留まるようになってきています。その用途はコンシューマー向けに止まらず、建築やエンジニアリング、ひいては軍事にいたるまで、あらゆる産業でのビジネス活用が進んでいます。本記事では、そのなかでも「製造業」にフォーカスして、製造現場におけるARの活用と、その具体的なソリューションについて解説します。

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「拡張現実感」と呼ばれる、AR技術を活用したサービスが、ゲームなどを通じて一般消費者の間でも目に留まるようになってきています。その用途はコンシューマー向けに止まらず、建築やエンジニアリング、ひいては軍事にいたるまで、あらゆる産業でのビジネス活用が進んでいます。

本記事では、そのなかでも「製造業」にフォーカスして、製造現場におけるARの活用と、その具体的なソリューションについて解説します。

ARが製造現場で活用される背景

まずは、ARが製造現場で活用される背景について、大きく2つに分けてご説明します。

製造現場の人手不足と技術継承問題

製造業といえばGDPの約20%、輸出の約80%を占める、日本における戦後以来の基幹産業といえます。「モノづくり大国」そのものを体現する業界ですが、ここ数年は国際競争力がどんどん逓減しています。

その大きな要因の一つとして挙げられるのが、製造現場における人員不足の深刻化です。国全体が超高齢社会に突入し、これまで土台を支えてきた「熟練工」が高齢のために退職を余儀なくされていますが、その後継となる人材が圧倒的に不足しているのです。

これに対して今、現場ではAIをはじめとする様々なテクノロジーの導入に期待が寄せられています。たとえばAR技術を活用することで、これまでは伝達の難しかった属人的な技術やノウハウであっても、立体的な視点で伝えることが可能です。人材育成はもちろん、技術継承の観点でも有効に機能する可能性が高まっています。

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ハードウェア性能の向上と低価格化

スマートグラスを始めとするARの実用化に必要なハードウェア性能の向上と、低価格化も重要なポイントです。

製造現場でARグラスを導入するためには、長時間着用できるほど軽量化され、バッテリーが長時間稼働でき、かつ大量導入が可能なレベルで低価格化が実現できていることが挙げられます。こうした要件を満たすデバイスは、これまでは技術的に困難でしたが、2020年には低価格なARグラスが市場へと続々と登場してきており、製造現場での活用の可能性も高まってきています。

ARの製造現場での活用用途3選

このように、製造業において、社会トレンドと技術的ブレイクスルーの両面を背景に期待されているARですが、具体的にはどのように活用される想定なのでしょうか。

保守・点検業務の効率化

製造現場においては、品質維持のために、実際にできた製品の検品作業が行われています。複雑な製品を検品する際、印刷されたマニュアルや指示書の資料に照らし合わせて製品を検品する必要がありますが、分厚い資料を片手にチェックしていくのは負担が大きく、非効率的です。

こうした作業において、ARグラスを装着してディスプレイ上に必要な情報を全て表示しながら作業を進めることができれば、手に資料などを持たなくて良くなりハンズフリーで諸々の作業を進められます。その結果、圧倒的な業務効率化に繋がるといえます。

また、たとえば位置情報と組み合わせた情報表示もできるため、どこにどのようなスイッチがあり、どのような順番で操作していけば良いかなど、具体的なオペレーション手順を行動とともに確認していくことも可能になります。

遠隔トレーニングによる学習のコスト削減

ARは、遠隔でのトレーニングにも適しています。

従来では、製造現場において支援者がトレーニングを行うためには、実際に現場に訪問し、対面で指導をおこなう必要がありました。しかし、この方法では日程調整や移動のために時間やコストがかかり、なによりも対応人数に限界があるため教育カリキュラムの実施拡張性に欠けます。

対してARを活用すれば、たとえば熟練工のオペレーション内容を記録・編集して、それを3D空間上で実際に再生して動きをともなった指導が可能です。したがって、支援者と学習者双方の物理的な場所を問わずにトレーニングを進めることができます。

また録画だけではなく、ビデオチャットの要領でリアルタイムでの映像転送も可能であるため、遠隔にいながら互いが実際に見えているものを確認して、細かい指導ができます。

さらに実際のモノがなくても、トレーニングに使用する装置や製品を、空間上に3Dモデルとして表示することも可能です。たとえば高価な装置や製品をトレーニング用に用意する必要がなく、また場所を確保する必要もないため、コスト削減の効果もあります。

製造マニュアルとしての活用

ARグラスを活用すると、製造や組み立ての工程をディスプレイに表示することが可能です。

この場合、紙のマニュアルなどを見るよりも、実際の空間で作業の詳細を確認することが可能となるため、より高い精度が期待できます。

もちろん、静止した3D画像のみならず、実際のオペレーションに沿った3D動画で確認することも可能なため、より作業ミス防止に有効な手段だといえます。

製造現場におけるARの活用事例3選

最後に、実際の製造現場におけるAR活用事例を見ていきましょう。ここでは国内外合わせて2つの事例をご紹介します。

AGC株式会社:素材開発プロセスへAR導入

世界最大手のガラスメーカーであるAGC株式会社は、2019年12月より、ARスタートアップ・KAKUCHOが提供する「Web AR」の試験使用をすることを発表しました。

Web ARとは、製造・開発など、現場を問わずURLを共有すれば、専用アプリを開発することなく、Webブラウザ上で簡単に実寸大の製品イメージが確認できるARシステムです。

一般的に素材開発を進める場合、組成開発から生産プロセス開発、設備開発などの開発フェーズから量産にいたるまで、数十年を要することが多々あります。なかでも設備開発は、同じ図面や仕様を共有していたとしても各関係者間で現物のイメージに認識のズレが生じるため、どうしても時間がかかってしまいます。

この課題を解決するためにAGCが着目したのが、素材開発におけるAR活用でした。webARを利用すると、事前にURLを共有し、関係者がタブレットなどのデバイスを現場でかざすことで、開発設備をそのままの形状・サイズ感で、現場風景に重ね合わせる形で表示することができます。

現場のレイアウトや作業性・安全性等を設備導入前にチェックすることができるため、上述のユースケースでもお伝えした通り各関係者間のコミュニケーションが促進され、設備開発および素材開発全体のスピードアップを目指していくとしています。

BAEシステムズ:現場トレーニングへAR導入

航空宇宙関連企業のBAEシステムズは、Microsoft社の「HoloLens」を社内トレーニング用のデバイスとして導入しています。

具体的には、マニュアルを3D作成して手元で作業する機材などと重ねて表示。こちらも上述した通り、紙で作った場合と異なり、実際の部品等と重ねて3Dモデルの部品が表示されるため、作業手順を直感的に把握し、効率的に学習訓練が可能です。

導入の結果として、学習訓練に要する時間が従来比で30~40%も削減されました。また新製品の生産ライン立ち上げ時においては、教育および学習訓練コストを従来の10分の1にまで削減することに成功しました。

ARは現実を超える!製造現場はARで変わる

ARの製造現場での活用はさまざまな可能性があります。3Dのクオリティは年々上がってきており、実際の空間に近いリアルなCGを再現することが可能になっています。だからこそ、より高度なトレーニングや生産管理を行うことができるようになってきており、結果としてさまざまなコスト削減にも貢献しうる技術になりつつあります。

製造現場でのARの利活用が広がっており、今後さらに広がっていくでしょう。

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