「高齢化社会」「もったいない精神」「製造現場の高度化」に直面する日本にフィットするARソリューション「WorkView™」

Business
2020.06.18 | Motto AR編集部

現場作業者向けARソリューション「WorkView」を提供するAugmentalisが日本に進出。CEOであるマノジ・ジャウワ氏にインタビューを行いました。

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Augmentalis(オーグメンタリス)のCEOであるマノジ・ジャウワ(Manoj Jhawer)氏が2020年2月に来日。その目的、自社ソリューションの強み、日本進出の狙い、今後の展望などをインタビューしました。

スマートデバイスを“魔法のアイテム”に変えるARソリューション「WorkView」

Augmentalisの「WorkView」は、現場作業者が必要なあらゆる情報を提供する
ARソリューション。「ARタスクを5分以内に展開」を合い言葉に、作業の手を止めることなく情報を参照できる仕組みを構築しています。画像や音声のデータを作業者の手元に迅速に届け、音声操作で必要な情報を必要なタイミングで引き出せるのが特徴です。作業者からのフィードバックを蓄積し、データを更新する仕組みも用意されており、これらのサービスをビジュアルに構築・保守することが可能です。

Augmentalisを率いるマノジ・ジャウワ氏に、まずサービス開発に至った経緯を聞きました。

「WorkView」は、集中力を途切れさせず情報入手を可能にする

――まずはAugmentalisがどういう企業なのかを教えてください。

ジャウワ(以下敬称略):私は18歳のころにソフトウェア開発者としてスタートし、IT業界でのキャリアを重ねてきました。営業マンとしてトップになったこともあるし、製造企業のCEOを務めたこともあります。CEOになったときには、すべての製造現場、工場、取引先に出向くというポリシーで活動していましたが、そのときに大きな問題を感じました。“実際に現場にいる担当者たちは、必要としている情報すべてを得られていない”ということです。資料を事前に用意していても、現場に入るとやはり足りないものが出てくる。製造現場だけでなく、出荷や荷受け対応の現場でも、作業をして情報を見てまた作業に戻って…ということばかりやっています。

そこで、すべての必要なインフォメーションを提供する仕組み、コンピューターを見に行かなくてもその場で確認できる仕組みをつくろうと考えました。スマートグラス、スマートウォッチ、スマートフォン、タブレットから、ほしい情報を即座に引き出せるプラットフォームの構想です。魔法のアイテムを持ち歩くように、さまざまなデバイスを持ち歩き、そこから情報を取り出す、というイメージですね。

ただマジックデバイスがあっても、それだけでは意味を成しません。そこに働きかけ増強するソフトウェアが必要です。そういう観点から、Augmentalisを立ち上げ、ARソリューション「WorkView」をつくり上げました。「Augmentalis」という社名は、“Augment(拡張する)”と“Talisman(護符・幸運の御守り)”を組み合わせた言葉で、まさにその理念を表しています。

ARソリューション「WorkView」の利点
ARソリューション「WorkView」の利点

――スマートグラス、スマートウォッチなどのデバイスは、ここ数年で大きく進化し、現在もまだ変化している領域だと思います。不満や不安はありませんでしたか?

ジャウワ:たしかにそういった面はあります。ただデバイス自体は、その時代ごとに最先端のものが登場しているわけですから、物足りないという考えはありません。ユーザーが使いたい機能を可能な限り想像して、それを音声コマンドで操作し、社内データベースから自在に引っ張り出せる環境を、ゴールとして常に意識しています。

「WorkView」は、仕事のために欲しい情報を、欲しい場所で、自由に見ることができます。開発にはほぼ2年をかけましたが、ベストに近い形に仕上がったと思います。デスクトップで使っている環境を、そのままさまざまなデバイスでも使える、という理念で開発しているため、マルチタスクも可能ですし、Office製品とのコラボレーションも可能です。

資料を見ながらビデオ通話しメールもチェックする、それも作業現場で!というのが「WorkView」なんですね。現場では、ここに実作業が加わるわけですから、シングルタスクで閲覧を進めたり戻ったり、プログラムを開いたり閉じたりしていると、自分が何をしているかわからなくなってしまう。さらに集中力も途切れてしまう。そういったことが起きないよう配慮しています。

ARソリューション「WorkView」の構成
ARソリューション「WorkView」の構成

――「WorkView」の開発スタート時期と、市場への投入時期、現在の採用状況などを教えてください。

ジャウワ:Augmentalisの創業と同時ですから、2018年3月から具体的な開発をスタートしました。2019年6月に「WorkView」が完成し、そこから3か月間ベータテストを重ね、9月に市場投入しました。発表後30日以内で、大手企業から問い合わせが入るなど、さまざまな事案が動き出しましたが、各社に向けたカスタマイズなどもあるので、そのあたりは慎重に対応しています。製品の評価をしてもらい、そのうえで実装を進めています。いま(2020年2月時点)では、75社が採用済み・採用予定となっています。“未来に自社を担うスマートワーカーを育てよう”という視点で「WorkView」を前提とした環境構築を進めている大手企業もあります。

インタビュー時の模様
インタビュー時の模様

現場で情報を操る「スマートワーカー」を生み出すのが、Augmentalisの目標

――「スマートワーカー」というのは、どういった人たちなんでしょうか?

ジャウワ:スマートワーカーは、場所や時間に縛られない柔軟な働き方をする生産性の高い人たちのことです。たとえば工場現場の担当者がスマートワーカーであれば、そこで必要な、ありとあらゆる人や情報にコンタクト可能になります。スマートグラスやスマートウォッチで情報を確認することもできるし、他の作業者に音声電話で連絡をとり情報を受け渡すことも、その場で自由にできます。熟練者の意見を聞いてもいいでしょう。

現場作業者がスマートワーカーの事例を紹介します。この企業では、移動に必要な地図情報を送り、現場に到達したことをGPSから察知して自動的に他アプリケーションに切り替え、現場状況を知らせるといった使い方をしています。機械の故障や動作不良であれば、作業者がボイスコマンドで内容を伝えると、修理に必要な情報が表示されます。

さらにある工場では、スマートグラスを通じて、作業状況を蓄積し、不具合の発生などに対処しています。機械にはQRコードが貼られていて、それを読み込むだけで、その機械の使用履歴やマニュアル情報が現場で引き出せます。前回メンテナンスの時期やそのときの担当者もすぐわかるし、すぐに連絡を取ることができます。

――いわゆるオフィスワーカーがパソコンやWebサービスを使いこなすように、スマートワーカーはマジックデバイスを使いこなす、というわけですね。

ジャウワ:通信できない接続環境であっても、マニュアル、動画、文書、ワークフローやチェックリストなどのデータを格納しておくことが「WorkView」では可能です。これは他社の類似サービスにない「WorkView」の圧倒的なアドバンテージだと考えています。

「WorkView」の直接データ配信
現場作業者に対し「WorkView」が直接データを配信する
自社戦略を語る口調に自然と熱がこもるジャウワ氏
自社戦略を語る口調に自然と熱がこもるジャウワ氏

日本進出の鍵は「高齢社会」「もったいない精神」「製造現場の高度化」

――日本への進出については、どのように進められたのでしょうか?

ジャウワ:日本進出は、創業時点から視野に入れていました。WorkViewの大きな利点は、専門家が蓄積してきた知見を現場に活かせることです。彼らの持っている技術・技能を若手に継承することは重要です。一方で日本は高齢化が進んでおり、こうした専門家も、高齢でリタイアしようとしていることが多い。いまさらパソコンを覚えたくないという人も多いでしょう。これがよりシンプルなスマートデバイスであれば、使いこなすことができます。

また日本の特殊性として、既存のものを大事に使い続ける“もったいない精神”、メンテナンスを重視する文化があると私は考えています。使われている機械の数は膨大ですので、1人ですべてを把握することは無理ですが、現場の人間が自由に情報を引き出せるなら、こうしたメンテナンスの負担も軽減できるでしょう。

そして最後に、日本の製造業が世界のトップクラスにあることも、日本進出の理由です。日本の製造工程をアメリカもドイツも真似しています。しかしマニュアル作成などで、ダブルチェックやトリプルチェックが必要になるなど、煩雑な面も多い。製品数も型式も増えこそするが減りはしない。現場の作業員がすべてを知るのは不可能ですし、コンピューターによる援用も限界がある。スマートデバイスを使ったソリューションは、こうした負担を大きく軽減すると思います。

――鍵は「高齢化社会」「もったいない精神」「製造現場の高度化」ということですね。

ジャウワ:あと、今回の来日に際してアイデアが浮かんだのですが、ビルやイベントのセキュリティなどにもWorkViewは応用できます。警備員が巡回する際に、単純に見えている範囲だけでなく、ビル内の複数の場所をビデオチェックできるといった使い方です。モニター室のデスクに座ってそこから指示を出さなくても、警備員同士が有機的に状況を把握できるというのは、おもしろいのではないでしょうか? WorkViewはプラットフォームがオープンに設計されているので、こうした事例も想定できると思います。

笑顔のジャウワ氏
日本進出について、ジャウワ氏は笑顔の下に強い意志を覗かせた
最新バージョン「WorkView 4.1」の機能
最新バージョン「WorkView 4.1」の機能

「違う飲み物のおいしさ」をアウトソーシングテクノロジー(以下OSTech)とともに提供

――WorkViewは、日本の状況にマッチしているのですね。逆に、日本進出にあたって、もっとも大きな障壁と感じたポイントがあれば教えてください。

ジャウワ:日本はテクノロジー領域ではイノベーターの位置にいますが、新技術導入においては慎重だと思います。リモートメンターという使い方に可能性を感じていても、他の用途についてはあまり検討してくれません。本来ならもっと活かせるシチュエーションもあるはずですが、考え方をオープンにしてフルパワーで活用するというところにいたらないのです。そして、すべてをスマートデバイスに移行する、といった振り切った施策にもなかなか乗り出せない。経営層に高い目的意識がないと、進めないのだと思います。

たとえばある会社が製品をつくり、似たようなものを他メーカーが持ってきた、というのであれば理解してくれます。しかしまったく異なる製品を提示すると理解されないし、理解にも時間がかかる。水を飲めばのどの渇きは潤せるけど、まったく違うドリンクならおいしさが出てくる。「水じゃない、違う飲み物がほしい!」と、どう言わせるかですね(笑)。

――そうした細かな感覚をアジャストするために、日本での展開においてはOSTechと協業するということでしょうか?

ジャウワ:じつは日本進出においては、複数企業から協業の打診がありました。そこからOSTechさんを選んだのは、「隠れたニーズ」「隠れた優良企業」にも対応したかったからです。顧客企業が考えているニーズ以上に、潜在的に抱えているニーズを掘り起こせるかどうか、を重視しました。水ではなくお茶を売るにしても、どのお茶も90%は水。しかしその味わいは、各社まったく違う。みんなが同じサービスを売っているからそれを提案するのではなく、顧客企業に最大にマッチしたサービスを提供できるかどうか。そうした観点から、OSTechさんを選択しました。

――そうしますと、日本でも各社のニーズに合わせて、WorkViewをカスタマイズ提供することに注力していくのでしょうか?

ジャウワ:すでにその方向で動いています。海外の事例では、某国空軍のWorkView採用において、3,000ページに及ぶマニュアル、解説ビデオのカスタマイズなどを数日で行っています。日本でも同様のスピード感で進めていく方針です。

――マニュアル管理に厳しい軍隊に採用されるというのはすごいですね。

ジャウワ:各社のニーズに細かく対応するという話では、ある企業において従業員同士が会話できるように、トランシーバー機能を追加しました。ビルや工場内のWi-Fiを利用し、スマートフォンを取り出すことなく、すぐに会話ができる機能で、今後は全面採用する予定です。ワーカー同士をコネクトすることも、スマートワークのひとつの在り方と思っています。

――日本市場でも、同様に新機能が実装される可能性があるのでしょうか?

ジャウワ:もちろんです。

――日本市場への進出ですが、どういった成功の指標やゴールを想定していますか?

ジャウワ:イエスですが、ノーでもあります(笑)。さまざまな指標・ゴール・目安を描いていますが、実は数値目標は現時点では置いていません。ゴールや数値目標を設定すること自体はかまわないのですが、あまりに新しいカテゴリであるために、その設定自体を評価しにくいのです。ここまでに受けた教訓でもあるのですが、私にとって成功と言えるものは、実際に顧客のところに行き、現場にも足を運び「その人たちの声やアイデアを感じとった瞬間があるかどうか」なのです。特に日本企業は慎重な方が多いので、会話してコミュニケーションしてアイデアを生み出して、という過程そのもの(が成功)なのだと思っています。

そして、私は日本進出が成功すると確信しています。昨日は4社とミーティングしたのですが、1社は保守的で反応があまりよくありませんでした。時期がまだ早かったのかもしれません。しかし残る3社からは、独創性や革新性を高く評価いただきました。特に、“自社よりも、自社の取引先に導入してもらうことで変革が望める”という反応が多く、1社は具体的な商談に進んだのです。75%のうちの25%が即商談成立と単純化して考えると、とてもよい結果だと思います(笑)。

日本だと1つの扉が閉ざされても、他の扉が開いていることもある。逆に、財閥系企業やグループ企業も多く、1社の導入が他社に波及するのもよくあるケースです。かなり早急に結果が出てくると思います。

――現場に足を運ぶこと、そこからニーズやアイデアをくみ取ることの重要性を、繰り返し強調されていますが、非常に心強い味方ができたと、顧客側も感じると思います。日本の企業経営者、そして現場担当者に一言お願いします。

ジャウワ:企業経営者の皆さま、現場担当者の皆さまに、贈りたいメッセージは1つです。必要とする情報を必要なタイミングで自由に引き出せることにより、業務の効率、作業員の安全性、セキュリティを改善することが可能です。スマートデバイスのシンプルな操作性により、新たな訓練を積む必要もなく、会話することができるなら、それで情報を引き出せます。コスト効率も悪くないと思います。ワーカーの効率を上げるということは、経営の観点からしても、負荷作用ではありません。どちらにとってもメリットになるのです。AugmentalisとOSTechは、そのお手伝いをしたいのです。

――ありがとうございました。

Augmentalis CEOのマノジ・ジャウワ氏
Augmentalis CEOのマノジ・ジャウワ氏

【マノジ・ジャウワ(Manoj Jhawer)氏のプロフィール】

18歳からソフトウェア開発を手掛け、複数のIT企業でキャリアアップ。2018年3月、アメリカのサンディエゴでAugmentalisを起業。「WorkView」普及の指揮を執っている。

インタビュー取材日:2020年2月14日

インタビュー場所:丸の内トラストタワー(OSTech会議室)

インタビュアー、撮影:冨岡晶

所属組織、業務内容、写真、発表内容は取材当時のものです。

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