デジタルツインとは?VRと何が違う?国交省による「Project PLATEAU」など個別事例も解説

Technology
2021.04.14 | Motto AR編集部

現実世界とそっくりのバーチャル空間上の再現世界は一般的に「デジタルツイン」と呼ばれており、これからのビジネス活動での応用が大いに期待されています。デジタルツインにはどんなメリットや具体事例が存在するのでしょうか。デジタルツインが注目される背景とともに、VRとの違いや関係性に言及したうえで、解説します。

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2021年3月26日、国土交通省は都市の3D化プロジェクト「Project PLATEAU(プラトー)」のバージョン1.0を公開しました。

Project PLATEAUとは、現実の都市をサイバー空間上に再現する、3D都市モデルの整備・活用・オープンデータ化事業です。まずは2020年度の事業成果として、全国56都市の3D都市モデル整備を完了させ、バージョン1.0として、開発したユースケース44件と実証成果を取りまとめた各種マニュアル・技術資料など10件を公開しました。

このような、現実世界とそっくりのバーチャル空間上の再現世界は一般的に「デジタルツイン」と呼ばれており、これからのビジネス活動での応用が大いに期待されています。

では、デジタルツインとはどのようなもので、どんなメリットや具体事例が存在するのでしょうか。本記事では、デジタルツインが注目される背景とともに、VRとの違いや関係性に言及したうえで、解説します。

なお、VRについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご参照ください。
【入門編】VRとは? 何ができるか解説! ARとの違いも

デジタルツインとは

デジタルツインとは

デジタルツインとは先述したとおり、現実世界である「フィジカル空間」の情報を、センサーなどを使ったIoT技術を駆使してリアルタイムに取得して、バーチャルである「サイバー空間」に再現する技術です(以下、本記事では、現実世界のことをフィジカル空間、バーチャル空間のことをサイバー空間と、それぞれ表記します)。

テクノロジーが発達し、情報の流動性が著しく高まってきたからこそ、デジタルツインのような構想が現実的に可能な時代になってきたといえます。

Society 5.0とは

Society 5.0とは
画像:内閣府「Society5.0

このデジタルツインを考える上で欠かせないのが、政府の掲げる「Society 5.0」という考え方です。

Society 5.0が具体的に登場したのは、2016年1月に閣議決定された「第5期科学技術基本計画」です。以下のように定義されており、Society 1.0(狩猟社会)、Society 2.0(農耕社会)、Society 3.0(工業社会)、Society 4.0(情報社会)につづく第五の社会のあり方として、掲げられています。

“サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)”

内閣府「Society 5.0 – 科学技術政策

Society 5.0の社会では、5Gのような強力な通信網を前提に、あらゆる人とモノがつながった社会が想定されており、「経済発展と社会的課題の解決の両立」を目的としています。

サイバーフィジカルシステム(CPS)とは

このSociety 5.0を支える技術的な思想としてあげられるのが「サイバーフィジカルシステム(Cyber-Physical System:以下、CPS)」です。

JEITA(電子情報技術産業協会)によると、CPSは以下で説明されています。

”CPSとは、実世界(フィジカル空間)にある多様なデータをセンサーネットワーク等で収集し、サイバー空間で大規模データ処理技術等を駆使して分析/知識化を行い、そこで創出した情報/価値によって、産業の活性化や社会問題の解決を図っていくものです。”

引用:JEITA「CPSとは
CPSとは
画像:JEITA「CPSとは

つまり、フィジカル空間からデータを収集し、そのデータをサイバー空間と同期させ、そこでシミュレーションや解析を行い、その結果をもとにフィジカル空間にフィードバックするというループを繰り返すという仕組みとなります。

このCPSによって形成される社会がSociety 5.0であり、具体的なプラットフォームとして開発が進められているのが、デジタルツインというわけです。

デジタルツインとVRの関係

デジタルツインとVRの関係

以上のとおり、デジタルツインそのものはサイバー空間上に構築されたフィジカル空間のコピーです。つまり、デジタルツインは、VR(バーチャルリアリティ)の一種であって、広大なVRという概念のなかに、デジタルツインというプラットフォームの概念が存在することになります。

もちろん、狭義におけるVRの定義として、「どこを見渡しても架空の世界」で「自分視点の映像」をチェックできるHMDベースのものを考えると、デジタルツインはそれにとどまらない概念となります。

なお、日本バーチャルリアリティ学会が2013年に発表した、2040年までのVRに関するロードマップにおいても、フィジカル空間とサイバー空間がシームレスに連携した社会像が「R-V連続体基盤」として表現されており、都市と地方および社会と個人が、それぞれ有機的につながった環境の構築が想定されています。

2040年までのVRに関するロードマップ
画像:日本バーチャルリアリティ学会誌 Vol18「日本バーチャルリアリティ学会

この、2013年時点で構想されていた「R-V連続体基盤」なるものが、現在でいうところのCPSを前提にしたデジタルツインだといえるでしょう。

なお、IoTとxRの組み合わせによる社会的インパクトについては、以下の記事もご参照ください。
AR/VRとIoTでどんなことができる?大量データをリッチに表現する未来像を解説

5Gによるデジタルツイン構築の後押し

この、デジタルツインの推進を具体的に後押ししている環境要因が、5G通信網の整備になります。

5Gは、従来の4Gに比べて通信速度が速く、大容量通信を実現する規格です。5Gの普及にともなって、情報の双方向通信がより容易になり、シームレスな相互的情報のやり取りを前提とするIoTも、より有機的に機能するようになります。

だからこそ、フィジカル空間の情報をサイバー空間へとリアルタイムで反映する仕組みも構築できると考えられているわけです。

なお、5Gの普及にともなうVRへのインパクトについては、以下の記事もご参照ください。
VRの市場規模は5G登場でどう変わるのか?2020年の業界動向と、2021年以降の市場を予想

デジタルツインを進めるメリット

デジタルツインを進めるメリット

ここからは、このデジタルツインの構築を進めることもメリットをお伝えします。現実世界では不可能なシミュレーション実施が可能なことで、具体的にどんなメリットがあるのか。以下、3点について考えます。

プロジェクトの円滑化

デジタルツインが機能する世界では、さまざまなプロジェクトがより円滑に進むことになります。

プロジェクトを進める上での障壁のひとつは、「実際にやってみないとわからない」という想定が行き届かない部分の存在です。デジタルツインの環境があることで、プロジェクトが進んだ場合のシミュレーションを行うことが可能です。その結果、上述のような想定が行き届かない部分の検証を実施前に行うことができ、ハードルとなる要因を未然につぶし、よりスムーズにプロジェクトを進めるようになることが想定されます。

品質の向上

デジタルツインを活用すると、開発するプロダクトの品質が、フィジカル空間のみでの開発よりも向上することが期待されます。

フィジカル空間で構築したプロダクトを、サイバー空間上で複数のシミュレーションシナリオをもとにテスト駆動させ、QA(品質保証)業務を進めていきます。サイバー空間とはいえ、フィジカル空間の情報をリアルタイムに反映したj環境になるため、まるで現実でテストを行なったかのような工程を何度も繰り返すことができ、プロダクトの品質を短期間で劇的に向上させることができる点も、期待されています。

コスト削減

以上のようなプロジェクト管理や品質向上をフィジカル空間で進めようとすると、時間に比例して相応のコストがかかることになります。

一方でデジタルツイン環境を活用することで、たとえばフィジカル空間の情報に即した仮想のプロダクトを作ってテストを行ってリリース品の形成までをサイバー空間上だけで進めることができるため、圧倒的なコストダウンも実現できると想定されています。

Project PLATEAU (プラトー)の事例

以上のようなデジタルツインを本格的に進める日本国の国家プロジェクトとして進んでいるのが、冒頭にご紹介した「Project PLATEAU」です。

バージョン1.0では、二次元の地図に建物や地形の高さなどを掛け合わせた三次元の都市空間マップを形成し、そこに建築物の名称や用途といった属性情報を加えています。これらの情報は、これまでは各省庁や地方自治体に分散していましたが、PLATEAUの構築によって、今後はこのプラットフォーム上に集約されることになります。

都市を3Dで再現するだけであれば、これまでも多くのプロジェクトがありました。しかし、PLATEAUが従来のそのようなプロジェクトと違うところは、建物などの建造物一つひとつに、明確な意味となる属性情報を付与している点にあるといえます。

一つひとつのオブジェクトを定義して名称や用途などの属性情報を記述できるデータフォーマット「City GML」を用いているため、たとえば歩行者専用道路であれば、「自転車は通ってはいけない、歩行者だけが通れる道路」という運用面も反映した形でマッピングされることになります。

2021年3月時点でも、複数の企業がPLATEAUを活用したシミュレーションを実証しており、たとえば森ビル株式会社は、屋内外をシームレスに繋ぐ避難訓練シミュレーションを行なっています。

虎ノ門ヒルズビジネスタワーの緻密な屋内モデルを制作し、3D都市モデルと統合。屋内と屋外をシームレスに繋いだバーチャル空間を構築した。新型コロナウイルスの影響で大人数が対面で集まる大規模避難訓練の実施が困難になるなか、バーチャル空間で複合施設における複数の避難計画のシミュレーションや、徒歩出退社訓練用のVRの構築を行った

なお、今後はバージョン2.0以降の進化を進めるべく、PLATEAUで構築される3D都市モデルの全国展開が予定されており、スマートシティをはじめとする「まちづくりのDX基盤」としての役割が期待されています。

Happy Quality社とフィトメトリクス社の事例

独自の農業モデル・マーケティング戦略により、農業支援を手がけるHappy Quality社と、植物化学・農業分野における画像解析技術の研究開発・コンサルティングを展開するフィトメトリクス社は、VR上に農作物栽培環境を完全再現3Dデジタルツイン環境のプラットフォーム開発に成功しました。

Happy Qualityが有する細密栽培管理技術と、フィトメトリクスが有するAI画像解析技術により、現実の農作物やハウス設備・環境データを高精度にVR上に再現可能です。

同プラットフォームに期待される役割としては以下に挙げられます。

  • ・環境情報や生育情報データを計測するセンサーの開発
  • ・バーチャル農業技術研修・遠隔栽培指導
  • ・栽培ハウス環境や生育状況などの構築シミュレーション

この技術により、農業界における技術継承者不足の解消、データドリブン農業の実現などが期待されます。

これから本格化するデジタルツインプロジェクト

以上、今回は話題になっている「デジタルツイン」について、その概要や技術的な背景、そして具体的なプロジェクトとして国土交通省が進めている「Project PLATEAU」の概要についてお伝えしました。

5Gの発達にともなうIoT技術の発展によって、CPSを前提とするデジタルツインの構築が物理的に可能になってきたといえるでしょう。 とはいえ、まだプロジェクト自体は始まったばかりです。今後の国内都市モデルの増強と合わせて、中長期的には国をまたいだ情報の連携についても、期待しましょう。

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