医療分野で活用できるAR/VR/MRソリューションとは?外科手術支援から心療内科まで活用事例8選を解説

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2021.01.27 | Motto AR編集部

医療分野におけるxR技術の活用は、手術支援から研修、リハビリテーション、PTSD治療まで、身体および精神医療分野の両面で大きく注目されています。

本記事では、医療でのAR/VR/MR活用の用途とメリットをお伝えした後に、外科や眼科、心療内科など、代表的な診療科目における活用事例をみていきます。

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ここ数年で注目度が増しているxR技術(VR/AR/MR)。ゲームなどのエンタメ領域はもとより、製造や建築の現場、教育領域など、5Gなどの環境整備によってさまざまなシーンでの活用と社会実装が進んでいます。

そのなかでも医療分野におけるxR技術の活用は、手術支援から研修、リハビリテーション、PTSD治療まで、身体および精神医療分野の両面で大きく注目されています。

本記事では、医療でのAR/VR/MR活用の用途とメリットをお伝えした後に、外科や眼科、心療内科など、代表的な診療科目における活用事例をみていきます。

医療でのAR/VR/MR活用用途とメリット

まずは、利用領域でxR技術がどのように活用されるのか、それぞれの用途と活用のメリットについて解説します。

手術支援・遠隔支援

AR/VR/MRは、手術を執刀する医師やチームをサポートするための手段として有効です。

たとえば事前のメンバー間シミュレーションにおいて、患者の幹部にまつわるCTスキャンデータを、ARやVRゴーグルを装着することによって3Dポリゴンで再現し、患者の骨や血管、筋肉組織、臓器等の位置関係や幹部の状況などを、よりクリアで分かりやすく認知できるようになります。

また、現場となる手術室にいなかったとしても、ARやVRゴーグル経由で遠隔地からそれらのデータを確認することもできるので、複数医師による遠隔支援を実現することもできます。

さらに実際に手術を執刀する際にも、たとえばARグラス越しに患者の血圧や心拍数といった各種生理指標等を表示することも可能なので、執刀者の状況認識が向上し、より効率的な手術の実施を実現できます。

診察・患者説明

AR/VR/MRは、一般的な診察シーンや、患者への症状や術式の説明にも有効です。

昨今の医療現場では、患者やその家族に対するインフォームドコンセントが重要であるとされています。インフォームドコンセントとは、医師と患者との十分な情報を得た上での合意を意味する言葉で、公益社団法人日本看護協会では以下の通り定義されています。

“インフォームドコンセントとは、患者・家族が病状や治療について十分に理解し、また、医療職も患者・家族の意向や様々な状況や説明内容をどのように受け止めたか、どのような医療を選択するか、患者・家族、医療職、ソーシャルワーカーやケアマネジャーなど関係者と互いに情報共有し、皆で合意するプロセスである。インフォームドコンセントは、ただ単に病状を告げ、同意書をとることではない。日常の場面においても、患者と医療職は十分に話し合って、どのようなケアを行うか決定する必要がある。

-引用元:公益社団法人日本看護協会「インフォームドコンセントと倫理」より

自身か家族の症状について説明してもらう際は、だいたいが医師からの口頭説明であったり、CT画像のような二次元情報のみでした。これに対してAR/VR/MRを活用すると、医療知識が乏しい患者であっても具体的な3Dイメージをベースに説明を受けることができるので、よりインフォームドコンセントに即したコミュニケーションが実現し、症状等への理解が深まることになります。

治療・リハビリ

手術や診察のみならず、AR/VR/MRは治療領域においても有効です。

たとえばVRリハビリキット「RehaVR」では、患者は装着したVR-HMDに上映される全国各地の名所を見ながら、トレーナーと共に足こぎペダルで散歩運動を行うように設計されています。散歩をしているような感覚で楽しく体力・筋力を維持し、トレーナーの実力を問わずADL(日常生活動作)の維持・改善を進めることができるツールとして注目されています。

このように、従来から課題となっていたトレーナーごとの訓練内容等を均質化し、適切なタイミングで介入できることも、AR/VR/MR活用のメリットだといえます。

教育・研修・訓練

最後は、教育や研修用途でのAR/VR/MR活用です。

xRは技術伝承やビジュアルや行動をともなう学習について、非常に有効だといえます。医療領域では、たとえば人体の内部構造を3Dモデル化してVRグラスで参照したり、スマートグラス越しで見える対象者の口内環境を拡大してバーチャル治療を実践するなど、様々なシミュレーションとそれに伴う実践を行うことができます。

その最大の功績は、多くの学生や医師が、より失敗を恐れずに医療関連の学習を進めることができる点にあるといえるでしょう。臨床や手術の場での失敗は絶対的に危険だからこそ、AR/VR/MRを活用した「失敗許容環境」の提供は、より高くて実践的な教育効果をもたらしてくれます。

外科領域でのAR/VR/MR活用例

ここからは、各診療科目における活用事例を紹介します。まずは外科領域におけるAR/VR/MRの活用事例についてです。

Holoeyes MD(Holoeyes株式会社)

用途:診察・患者説明、教育・研修

日本のHoloeyes株式会社が提供する「Holoeyes MD」は、CTやMRIから得られる人体のポリゴンデータを3Dモデルに変換し、AR/VR/MRで体験・共有することができるサービスです。

従来の平面モニター画面では、3Dとしての人体構造を的確に把握することは困難でした。これに対してHoloeyes MDを活用することで、解剖や病態を立体空間的に体験できるので、より直感的な理解を促すことができます。

つまり、医師間における情報交換時はもちろん、医師から患者への説明や、メディカルスタッフや学生への説明など、様々な情報伝達シーンにおいて、よりリッチなコミュニケーションが可能になるといえます。

GLOW800(Leica Microsystems社)

用途:手術支援・遠隔支援

画像引用:Leica Microsystems “Augmented Reality Fluorescence GLOW800”

フランスのLeica Microsystems社が提供する「GLOW800」は、AR技術によって患者の大脳構造の様子を見える化し、脳外科手術における利便性を高めてくれるツールです。

脳画像診断顕微鏡モジュールと呼ばれる領域の医療機器で、AR蛍光システムとICG(医療に用いられるシアニン色素)を使うことで、リアルタイムの血管の流れをわかりやすく表現し、どのような奥行きになっているかを直感的に知覚・観察することができます。

また、このリアルタイム蛍光血流ビューと白色光を同時に表示することで、たとえば進行する手術を一時停止して白黒のNIR(近赤外分析計)蛍光ビデオを確認した後に白色光モードに戻って操作を続行する、といった煩雑な操作も必要なく、難易度の高低を問わず手術の成功率を高めてくれることが期待されます。

眼科領域でのAR/VR/MR活用例

次に、眼科領域におけるAR/VR/MRの活用事例をみていきましょう。

MSICSシミュレーター(HelpMeSee)

用途:教育・研修・訓練

画像引用:HelpMeSee “SIMULATION-BASED TRAINING

白内障による失明の撲滅を目指す米国の非営利組織・HelpMeSeeでは、用手小切開白内障手術(以下、MSICS)の訓練用システムとして「MSICSシミュレーター」を提供しています。

MSICSとは、小切開から眼球の水晶体を破砕して除去し人口眼内レンズへと取り替えることで、低コストで白内障のレンズの曇りを除去するという方法です。MSICSシミュレーターは、このMSICSの指導に焦点を当てたシミュレーションベースのトレーニングプログラムとして設計されたものです。

操作者がレンズを覗き込むと、そこには非常に詳細な人の眼球を再現した3Dモデルが表現されており、そこに対して、実際の外科手術で使われる器具と同じインターフェースの器具を使って、仮想の処置を実施していくこととなります。

こちらは主に、治療費用や開業医不足などの理由で白内障治療に課題が多くある発展途上国において、展開されています。

Vivid Vision Home(Vivid Vision社)

用途:治療・リハビリ

画像引用:Vivid Vision “Vivid Vision Home

米国のVivid Vision社が提供する「Vivid Vision Home」は、VRを使って弱視や斜視といった症状の治療を行う製品です。Oculus GoやOculus Questシリーズ、Rift Headset (CV1)、HTC Viveなどの既製品に対応しており、両眼の視力を改善するのに役立つゲームやアクティビティを提供するものです。

具体的には、以下のようなフローで両目に異なった情報を投影することで症状が改善されると、Vivid Vision社は説明しています。

  1. 最初に同じ画像が投影され、そこから強い目用のものと弱い目用のものに分割される
  2. 強い目のオブジェクトの信号強度を下げ、弱い目のオブジェクトの信号強度を上げて、オブジェクトが連携しやすくする
  3. 毎週続けていくことで、目の違いはどんどん小さくなっていく
  4. さらに練習を続けることで、2つの目はチームを組んで一緒に働く方法を学んでいく
  5. 最終的には画像を分割する必要がなくなり、両目の強さが一致する

なお、こちらはあくまで医療機関関係者のみが購入できるものとなります。

心療内科領域でのAR/VR/MR活用例

最後は、心療内科領域におけるAR/VR/MRの活用事例をみていきましょう。

Bravemind(Virtually Better社)

用途:治療・リハビリ

画像引用:Virtually Better “Bravemind

米国のVirtually Better社が提供する「Bravemind」は、戦闘を通じてPTSD(心的外傷後ストレス障害)を患う兵士たちの治療を目的に開発された臨床ツールです。南カリフォルニア大学による持続エクスポージャー療法(PE)の研究を基に、海軍医療センター(Naval Medical Center San Diego)およびジュネーブ財団と共同で開発されたものです。

Bravemindでは、患者が不安を誘発する刺激に慣れるまで、外傷的な戦闘関連の記憶の根底にある経験を、VRを通じて段階的に曝露していきます。

具体的にはイラクとアフガニスタンでのシチュエーションに準拠しており、移動カートに取り付けられたPCディスプレイとVR-HMDのほか、爆発や地鳴りといった振動を再現する床置き型の触覚フィールドや、火薬や燃えるゴムなどの臭いを再現する香り生成マシンなど、専用のハードウェアを使っての治療となります。

Phobias Suite(Virtually Better社)

用途:治療・リハビリ

画像引用:Virtually Better “Phobias Suite

こちらも、先ほどの米Virtually Better社が提供するソフトウェアです。「Phobias Suite」は、さまざまな恐怖症の症状を改善するバーチャルリアリティ曝露療法(VRET)のソフトウェアであり、先ほどのBravemindと違って、ノートパソコンやVR-HMDなど一般的な装置で体験することができます。

また、Phobias Suiteには様々な感覚を引き起こす露出要素が多く組み込まれているので、患者はVR-HMDを装着することで、現実世界の制約を受けないさまざまなシナリオを通じて治療にあたることができます。

2021年1月時点で対応している恐怖症は、以下の通りです。

  • 飛行機恐怖症
  • 高所恐怖症
  • 橋に対する恐怖
  • 人前で話すことへの恐怖
  • 嵐や災害に対する恐怖
  • 暗闇への恐怖
  • 犬恐怖症
  • 蜘蛛への恐怖
  • ゴキブリへの恐怖

様々なハードで実現する医療用AR/VR/MRソリューション

以上の通り、AR/VR/MRは様々な医療行為において積極的に活用されています。一般的にイメージするようなHMD型のものだけでなく、専用に構築されたハードウェアが多数あることも、おわりいただけたのではないでしょうか。

これからxR技術を活用した医療ソリューションは、ますます増えていくことが想定されるでしょう。

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