AR/VR・メタバース拡大のカギを握る「OS」

Technology
2022.06.22 | Motto AR編集部

2021年から本格的に認知が広がっていった「メタバース」。一過性のブームなのか、それともWeb3の動きと絡めた壮大な社会的トランスフォーメーションの“のろし”となるのか。その結論を左右する重要な要素の一つが、ARやVRといったxR技術の発展だと言えそうです。

今回は、そんなxR技術の要ともなる「OS」について。スマートフォンの次なるデバイス覇権の行方を握るOSへの取り組み状況について、テック大手各社の開発動向をレポートします。

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2021年から本格的に認知が広がっていった「メタバース」。一過性のブームなのか、それともWeb3の動きと絡めた壮大な社会的トランスフォーメーションの“のろし”となるのか。その結論を左右する重要な要素の一つが、ARやVRといったxR技術の発展だと言えそうです。

今回は、そんなxR技術の要ともなる「OS」について。スマートフォンの次なるデバイス覇権の行方を握るOSへの取り組み状況について、テック大手各社の開発動向をレポートします。

なぜ、AR業界でOSの開発に注目すべきなのか

そもそもOS(Operating System)とは、あらゆるコンピューター・システムが動作する際に必要となる基盤的なソフトウェアを指します。

そのOSのデファクトスタンダード(公的機関の商人の有無にかかわらず、民間競争の結果、事実上の業界標準となっている標準のこと)を目指すことは、すなわちそのデジタル領域の覇権を握ることにもつながるわけです。

OSのデファクトスタンダードとして有名なものが、Microsoft社によるパソコンOS・Windowsです。1985年に発売された当初、Windowsで掲げられていた汎用OSは決して評判の良いものではなく、ハードウェアとの一体型で提供されていたApple社のMac OSと比べると、ギークたちの間では見劣りするものだと言われていました。しかし、世の中のハードウェア性能が劇的に向上していき、またOSとしての完成度も高まり、世界中のギークがWindowsを再評価していったことで、ソフトウェア界隈でのシェアがどんどんと広まり、結果として生活者も含めたパソコン利用におけるOSのデファクトスタンダードとなりました。

またこれと同様に、Googleが提供するスマートフォン向けOSのAndroidも、世界的な視野で見ると圧倒的なシェアを誇り、事実上のデファクトスタンダードとなっています。

一度OSで覇権を握ると、人々はそのOSに合わせたアプリなどのサービス開発を進め、結果として利用者サイドもそのサービスを利用することになります。たとえば Word・Excel・PowerPoint など、 Windowsと互換性の高いOffice製品は圧倒的なシェアを誇ります。また、iOS ・Androidの場合、アプリをリリースするためには Apple Store ・ Google Play などのプラットフォームを介なければなりません。そうなると、ますますそのOSへの依存度が高まることになるため、結果として「強いものはさらに強くなる」という構図が生まれます。

xR領域においても、今後同様のことが考えられるでしょう。どこがOSの圧倒的なシェアを握るかによって、後続のサービスも大きく変わることになります。

最新のxR/メタバース向けOS開発動向

それでは、具体的にどのような動きがあるのでしょうか。ここでは、Alphabet社(以下、Google)、Apple社、Meta社(旧Facebook社)、それぞれのxR/メタバースのOS開発動向を見ていきましょう。

2021年3月より拡張現実OSの開発に着手したGoogle

2021年12月13日、Googleに関する最新情報を配信するニュースサイト「9to5Google.com」は、同社が革新的なARデバイス(innovative AR device)のための「Augmented Reality OS(以下、拡張現実OS)」の開発着手と、それに付随する求人情報を発表したと報じました(該当記事はこちら)。

記事によると、プロジェクトを牽引するのは、直近で(2021年12月まで)Meta社のOculus VRでOSのゼネラルマネージャーを務めていたマーク・ルコフスキー氏。1980年代よりソフトウェアエンジニアのキャリアを積んできた、この分野のエキスパートです。ちなみにルコフスキー氏は、Googleに2004年〜2009年にかけて在籍していた経験があり、今回が2度目の参画となります。

記事執筆時点では、まだ具体的な構想は発信されておらず、まずは拡張現実OSの開発に向けた求人募集のポジションが公開された形です。

(求人ポジション例)

Senior Staff Software Engineer, Augmented Reality OS – Google – Mountain View, CA, USA – Seattle, WA, USA – United States – Google Careers

求人内容そのものを見ても、具体的なプロダクトイメージをもつことはできませんが、少なくとも「優れた没入型コンピューティングの基盤構築」という表現が所々に見受けられることから、全く新しい没入型のAR向けOSを構築しようとしていることはわかります。

※組み込みシステムの制御用途でよく使われるOS

まだ詳しい情報がほとんど出回っていませんが、生活者の興味関心に関するデータ(検索エンジンデータ)を、世界で最も多く有するGoogleだからこそのOS誕生が期待されるでしょう。

思わず広まった?Appleが進める独自OSの名前は「realityOS」か

Apple社では以前からAR用独自OSの開発を進めているとの噂がありましたが、その一端が表出したと思われるニュースが、2022年2月にテック界隈のニュースとして報じられました。

同社は、GitHubにてOSSディストリビューションアカウント「Apple OSS Distributions」を開設しており、そこで「MachOFile.cpp」というリポジトリを作成しています。このMachOFile.cpp自体はすぐに削除されたものの、第三者によってブランチが作成され、その中に「realityOS」や、そのシミュレーターの存在を示す表記が見つかったというのです。

そう、Apple社によるxR向け独自OSは「realityOS」という名称である可能性が高まりました。こちらの、Appleコード開発者の一人であるSteve Troughton-Smith氏は、そんな指摘をする方の一人です。

Appleといえば、独自のMRヘッドセットを2022年に発売すると噂されています。これは同社製品に関する予想で有名なMing-Chi Kuo氏によるもので、同氏は「Wi-Fi6Eをサポートする初のMRヘッドセットになる」とコメントしています(情報ソース)。ただし、同氏は「重大な技術的課題を解決できたら」ともエクスキューズを加えており、課題解決状況によっては2023年以降の発売になる可能性もあると言えるでしょう。

いずれにせよ、ここ数年での発売開始が想定されるMRヘッドセットに搭載されるOSが、今回意図せず拡散されることになった「realityOS」かもしれません。

本記事で言及するテック大手の中では、最もxR/メタバース向け独自OSの提供スケジュールが早いと思われるので、引き続き注視していきたいと思います。

「XROS」プロジェクトチームは解散。Metaの独自OS構想はお預けか

最後にご紹介するのは、2021年10月28日付で社名をFacebookから変更したMeta社です。独自スマートフォンの開発がとん挫するなど、現行デバイスの世界でOSの地位を獲得できなかったMeta社は、XRデバイスでのOSの地位の奪還を狙っています。同社が他のビッグテックに先駆けてメタバースへの注力を表明した背景には、次世代デバイスでのOSの地位の奪還という意図もあると考えてよいでしょう。とはいえ、同社のxR/メタバース向け独自OSプロジェクトは、現時点で保留ないしは中止の扱いになっているようです。

同社では、何年も前から「XROS」と呼ばれる独自OSの開発を進めていたのですが、2022年1月には「プロジェクトが白紙になった」とのニュースが複数テック系メディアで報じられ、また同年2月には、プロジェクトチームそのものが解散になったとのニュースが、同様に広がりました。

もっとも、Meta社からは「白紙」や「中止」という表現を一切しておらず、“人員の適切な配置による成長”というニュアンスの表現をしています。ただし、先述した現・GoogleのARデバイス向け拡張現実OSの開発責任者となったマーク・ルコフスキー氏がMeta社を去ってから、プロジェクトが思うように進まなくなったことは想像に難くありません。

どのような経緯や事情があるのかはわかりませんが、Meta社による「XROS」はいったんストップしたと考えても良さそうです。ちなみに、これまで同プロジェクトにいた研究開発エンジニア陣は、全員同社のARグラスおよびOculus Questヘッドセットの開発チームに移されたとのことです。Oculus Questデバイス/メタバースの普及に軸足を置きながら、OSの座の奪還に向け、虎視眈々と準備を整えている、と考えてよいでしょう。

全く予想がつかないOS開発競争

今回は、AR/VRおよびメタバース向けの独自OS開発の状況について、記事執筆時点で分かっていることをご紹介しました。大手テック企業とはいえ、どの企業とも様々な理由で開発が難航しているようです。

早くリリースしたプロダクトは、PR等の観点で優位であることは間違いないでしょう。一方でそれがそのままデファクトスタンダードになれるかというと、そうは問屋が卸しません。リリーススピードの他にも、さまざまな要因が重なることで、事実上の標準というものは決まります。

今後のOS開発競争がどのような結末を迎えるのか、もしくは全くの新しい企業による世代交代があり得るのか、引き続き注目していきます。

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