MRの世界を変える!?新プラットフォーム「Microsoft Mesh」とその可能性を解説
Technology
2021.03.24 | Motto AR編集部

米Microsoftが現地時間の2021年3月2日に、開発者向けカンファレンスにて、「Microsoft Mesh」とよばれる新MRプラットフォームを発表しました。同社によるMRスマートグラス「HoloLens 2」をを装着したメンバー同士が遠隔地にいながら、さも同じ部屋にいるかのように投影される「ホロポーテーション技術」を使って、会議や開発作業などでアバターによる共同活動ができるようになるといいます。本記事では、Ignite 2021で語られた情報やその技術仕様の概要についてご紹介します。
米Microsoft(マイクロソフト)が現地時間の2021年3月2日に、開発者向けカンファレンス「Microsoft Ignite 2021」(以下、Ignite 2021)にて、「Microsoft Mesh(マイクロソフト メッシュ)」とよばれる新MRプラットフォームを発表しました。
これは、同社によるMRスマートグラス「HoloLens 2」を活用したマルチユーザーサービスのための基盤となるもの。HoloLens 2を装着したメンバー同士が遠隔地にいながら、さも同じ部屋にいるかのように投影される「ホロポーテーション技術」を使って、会議や開発作業などでアバターによる共同活動ができるようになるといいます。
具体的にどのような内容のもので、どんな未来が期待されるのでしょうか。本記事では、Ignite 2021で語られた情報やその技術仕様の概要についてご紹介します。
Microsoft Meshとは
Ignite 2021でMicrosoft Meshを紹介したのは、マイクロソフトでテクニカルフェローを務めるAlex Kipman氏。HoloLensシリーズの主任開発者です。
Microsoft Meshではどんなことができるのでしょうか。以下、まずはコンセプト紹介動画をご覧ください。
Microsoft Meshは、Microsoft Azure[※1]上に構築された新しいMRプラットフォームで、物理的に別の場所にいる複数メンバーで3DCGを共有することができるMRアプリを構築できるものとなります。
完全オンラインで開催されたIgnite 2021において、Kipman氏はこのMicrosoft Meshを活用して、自身をホロポーテーションした状態で同カンファレンスのバーチャルステージに登壇。「Microsoft Meshは、MRの初期段階から描いていた夢のアイデアです」と語っています。
[※1]Microsoft Azure(マイクロソフト アジュール)とは・・・マイクロソフトが提供するクラウドコンピューティングサービスのこと。アマゾンのAWS(Amazon Web Service)やグーグルのGCP(Google Cloud Platform)と並ぶ。
Microsoft Meshでできること
Microsoft Meshを使うと、たとえば以下のイメージのように、メンバーはバーチャル空間上のアバターを使って共通のホログラフィックモデルについての作業を進めることができるようになります。
自動車産業であればホログラフィックモデルで再現した車の構造モデルを取り囲んで内部やテスト動作を確認することができるでしょうし、建設業であれば建設予定の建築物をホログラフィックモデルで確認しながら設計を進めることができるでしょう。もちろん、上記のようなものづくりの現場だけではなく、オフィスにおける会議やプレゼンテーションの場面でも、同様にホロポーテーション × ホログラフィックモデルを使って、現場さながらの状況を再現して進行させることができる想定です。
同社ではMRを、メインフレーム、パソコン、スマートフォンに続く4番目の新しいコンピューティング形態と位置付けており、Microsoft Meshによる体験を以下3つのキーワードで表しています。
- Feel presence(存在感を感じる)
- Experience together(一緒の体験)
- Connect from Anywhere(どこからでも接続)
Ignite 2021では、映画監督のJames Cameron氏やシルク・ドゥ・ソレイユの共同創設者であるGuy Laliberté氏、Pokémon GO開発元の米Niantic社創業者のJohn Hanke氏がそれぞれバーチャル空間上で登壇し、Microsoft Mesh活用の魅力を語りました。
たとえばJames Cameron氏は海洋探検家としても活動しており、カンファレンスでは深海探査プロジェクトである「OceanX」との新たな協業も発表。Microsoft Meshを活用して科学者らが参加できるバーチャルラボを、研究深海探査船の「OceanXplorer」に搭載する計画などが語られました。
Microsoft Meshの操作イメージ
具体的なMicrosoft Meshのオペレーションについてもみていきましょう。
オペレーションについては以下、Microsoft Meshの共同開発者であるSimon Skaria氏によるデモ動画にて紹介されています。
ここでは動画の2:20以降で説明されている「Demonstration of the multi-user experience」について紹介します。
ユーザーがHoloLens 2を装着・起動すると、以下の通り、自身はバーチャル空間場のアバターとして表現されるようになります。
この状態で、同様にHoloLens 2を装着・起動している別メンバーを、同じバーチャル空間に招待します。
すると以下のように、現実世界に重なる形で、共通のバーチャルデスクのようなオブジェクトの周囲に、ホロポーテーション表示されたメンバーのアバターが表現されコミュニケーションを取ることができるようになります。
もちろん、現実での光景は以下の通りです。
Microsoft Meshでは何かコントローラーのようなものを持つ必要はなく、HoloLens 2をかけることで、たとえば空間上に線を引いたりコメントを設置したりといった操作を、身振り手振りだけで実現することができます。
以上のように、Microsoft Meshを使用することで、共有されたクロスプラットフォームによるMR体験を構築することができるようになるでしょう。
Microsoft Meshの技術概要
次に、Microsoft Meshの技術的な構成についても確認していきましょう。そもそも、Microsoft Meshを構成する技術は、マイクロソフトがこれまで手がけてきた製品や事業を活かしたものであるといえ、Azure Spatial AnchorsやAzure Object Anchors、Azure Remote Rendering、AltspaceVRなどがあげられます。
その前提で、同社では以下のようなMicrosoft Meshの技術構成を発表しています。最下層ではマルチデバイスに対応している旨が、最上層ではMicrosoft Meshで利用可能なアプリケーションが、そして真ん中の層では開発者プラットフォームの概要が示されています。
注目すべきは、真ん中の開発者プラットフォーム。その中核となる技術は、先述した通りAzureであり、たとえばAAD(Azure Active Directory)やMicrosoft AccountsのようなIDサービスを使用することで、正式に認証と認可を受けたユーザーが安心安全に開発作業を行うことができるといいます。
特に記載されている4つの技術特性(Capabilities)によって、Microsoft MeshはMR空間上で大規模なMMO(massive multiuser online:マルチユーザーオンライン)のシナリオを実現することができるようになっています。
- Immersive presence(没入型プレゼンス):デバイスのインサイド-アウト型センサーによって、360度のホロポーテーションを実現する
- Spatial maps(空間マップ):3Dコンテンツを実際のオブジェクトに位置合わせすることで、位置合わせのエラーを減らし、ユーザーエクスペリエンスを向上させる
- Holographic rendering(ホログラフィックレンダリング):ほとんどの3Dファイル形式をサポートし、ネイティブにレンダリングしてアプリを有効にする
- Multiuser sync(マルチユーザー同期):空間オーディオによって、マルチユーザーシナリオで同じ物理空間にいるような感覚を生み出すアプリが可能になる
産官学さまざまなコラボレーションの促進に期待
以上、今回は新たに発表されたMicrosoft Meshについて解説しました。技術的に大きな特異性があるというよりも、マイクロソフトが提供する汎用的な他プラットフォームとの連携を通じて、より簡便に技術やソリューションへとアクセスできる点が、最も大きな特徴であることがおわかりいただけたのではないでしょうか。
このMicrosoft Meshは、数カ月以内に開発者への提供が開始されるとのことです。MRを活用した新プラットフォームとして、産官学さまざまなコラボレーションが促進されることが期待されます。

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