レゾナックがVR技術を半導体の材料開発に活用することに成功

2023.02.16

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株式会社レゾナックは、仮想現実(VR)技術を半導体の材料開発に活用することに成功した。VR技術は分子レベルの世界を3次元表示するもので、半導体材料開発の分野で導入されるのは国内初だ。(株式会社レゾナック調べ)

VR技術によりスピーディーな材料開発を実現

従来、材料の分子レベルの相互作用については、分子動力学計算(分子シミュレーション)※①を用いて計算し、結果の解析は計算科学の専門家の経験に頼っていた面が少なくなかった。VR技術を活用することで、現場で材料開発を担当している技術者など、より多くの技術者が解析できるようにして、スピーディーな材料開発を実現し、さらに新たな材料・素材の発見を進めていく。

分子レベルの解析のためのVR技術活用は、第1弾として、CMPスラリー(研磨材料)※②をはじめとした半導体材料や電子材料分野などの“無機基板と有機分子の相互作用メカニズム解析”に使われている。

従来の2次元的に表現した画像と、VR活用時の3次元的に表現した画像の対比
※シリカ(SiO2)基板上のイノシン酸(C10H13N4O8P)の分子動力学計算結果による例示で、半導体材料・電子材料分野の実例ではない。

VR活用時の画像は、3次元的に表現されたものを、便宜的に画像として2次元で表している。ヘッドマウントディスプレイで見る場合は、空間的な位置関係をより分かりやすく体感できる。

  • ※①分子動力学計算:原子の動きに着目し原子間の相互作用を考慮した運動方程式を解くことで分子の振る舞いを解析する計算手法。分子シミュレーションとも言う。
  • ※②CMPスラリー:CMP(Chemical Mechanical Planarization:化学的機械研磨)スラリーとは、砥粒と液体で構成され、半導体デバイスの回路形成工程で発生した凹凸を研磨、平坦化する材料。

背景

無機基板と有機分子の吸着性や接着性など、異なる材料の界面に対する相互作用については、分子動力学計算を実施し、計算結果はグラフソフトなどを用い、パソコンのディスプレイ上に2次元的に映し出して解析を行う。しかし、結合などの挙動メカニズム解明は、熟練の計算科学の専門家にとっても、統計的な解析にとどまることが多く、材料開発につながるレベルの直接的な解析は非常に困難であった。

このように複雑で困難であった、界面での分子の挙動の解析を実現するため、レゾナックは半年前からヘッドマウントディスプレイを用いたVR技術活用の検討を始め、今回有用であることを見出した。 VR技術を導入することにより、1mの100億分の一となる0.1nmの「原子・分子レベルの世界」を眼前に表現し、分子と同じスケールで直感的に操作をしながら3次元的に基板・分子界面に近づいて観察することができるようになる。この結果、計算科学の専門家だけでなく、材料の開発現場にいる「材料開発の専門家」も、基板の原子と有機分子の分子鎖が結合する様子などの振る舞いの詳細を解析することが可能となった。

モノづくりの現場から見ると別世界と思われがちな計算科学の世界が、VR技術によりだれにでも容易に“体感”できるようになり、ひいては、現場の“材料開発の専門家”と“計算科学の専門家”のコミュニケーションも円滑になり、材料の研究開発の加速につながると考えている。

VRとヘッドマウントディスプレイ使用時の様子

レゾナックグループについて

  • 半導体・電子材料、モビリティ、イノベーション材料、ケミカル等を展開し、川中から川下まで幅広い素材・先端材料テクノロジーを持つ化学会社。
  • 2023年1月に昭和電工グループと昭和電工マテリアルズグループ(旧日立化成グループ)が統合し、新たなスタートを切った。
  • 2021年度の売上高は1兆4千億円超、うち海外売上高が47%を占め、世界26の国や地域にある製造・販売拠点でグローバルに事業を展開している。
  • ウェブサイト:https://www.resonac.com/jp/
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