VR×建築の可能性とは?建築業界におけるVRの実用性やメリットを解説

Business
2020.12.24 | Motto AR編集部

近年では、アミューズメントやゲームの分野にVR技術が活用され、VRという概念は一般的に認知されるようになりました。それ以外の分野にも実用性が認められています。今回は、建築業界におけるVR技術の活用に焦点を当て、主な活用方法や活用するメリット・デメリット、すでに実用化されている事例について解説します。

  • twitter
  • facebook
  • LINE

「VR(Virtual Reality:仮想現実)」とは、主にヘッドマウントディスプレイ(HMD)とよばれるゴーグル型デバイスを装着することで、コンピューターによって作られた仮想空間に入り込める感覚を得られる技術です。

近年では、アミューズメントやゲームの分野にVR技術が活用され、VRという概念は一般的に認知されるようになりました。もちろん、それ以外の分野にも実用性が認められています。今回は、建築業界におけるVR技術の活用に焦点を当て、主な活用方法や活用するメリット・デメリット、すでに実用化されている事例について解説します。

建築業界におけるVR技術の活用法とは?

VRと建築

VR技術は、建築業界でのソリューションとしてはどう活用されているのでしょうか?

建築業界におけるVRコンテンツの種類

まず、技術的な観点から解説すると、VRコンテンツのあり方は主に次の2種類です。

  • 現実のポイントから360°カメラでパノラマ撮影したデータ
  • 3DCGをVR用に変換したデータ

前者では、ある一定のポイントからの景色しか見られませんが、制作コストは比較的低くなります。現実に実物がないと撮影ができないため、建売住宅のモデルルーム用に使われるケースが一般的です。

後者では、3Dモデルの中をある程度自由に動くことができ、幅広い用途に使えます。3DCGは、すでに制作済の3D CADデータやBIM(Building Information Modeling:細かいパーツで構成される3Dの建築設計データ)を使用するのが一般的です。

VRコンテンツは誰が使うのか?

上記のようなVRコンテンツを活用する人は、主に「施主(建築・設計の注文者)」と「建築士(または建築会社)」の2種類にわけられます。

施主目線での活用法は、VR空間に再現された完成形の確認・検証が代表的です。例えば、HMDを装着すると目の前に建物が現れ、少し離れたところから外観を見たり、建物内部に入って内観を見たりするイメージです。

設計データが完成していれば、現実世界で建築が始まる前から建物のデザインや雰囲気を見ることができます。

建築士目線での活用法は、VR体験を通した施主へのプレゼンや、現実の建築現場に起こりえる状況をシミュレーションして、事前のリスクアセスメントや現場への遠隔指示に利用するなど多岐に渡ります。

AR技術との組み合わせが重要

建築業界でははVR技術だけではなく、AR(Augmented Reality:拡張現実)技術とセットで利活用が可能です。

デジタルの世界に現実に近いものを再現するVR技術に対し、AR技術は現実世界にデジタルのコンテンツを再現します。これらを組み合わせると、どのようなことが可能でしょうか?

たとえば、建物のVRモデルが完成したら、現実の建設予定地にタブレット端末のカメラなどを通してVRモデルを再現する方法があります。そうすることで、実際に建てられた後の景観に対するシミュレーションが、現実にかなり近い形で行えるようになります。

このように、現実世界の中に仮想世界の情報や映像を再現する技術を「MR(Mixed Reality:複合現実)」とよびます。

MR技術を活用した『AR匠(エーアールタクミ)』

当メディアを運営する株式会社アウトソーシングテクノロジーが提供する『AR匠(エーアールタクミ)』は、MR技術の活用で現場作業の生産性向上、デジタル化を実現するDX(デジタルトランスフォーメーション)プラットフォームです。

ヘッドマウントディスプレイを装着して歩きまわるだけで現場の3Dモデルを作成でき、各種機能を組み合わせて、定期点検業務・メンテナンス・遠隔支援などに活用します。

生成した3Dモデルはブラウザーで表示できるほか、VRコンテンツとして実寸大での表示も可能です。

参考:AR匠 | 株式会社アウトソーシングテクノロジー

建築業界でVR技術を活用するメリットとは?

では、建設業界でVR技術を活用した場合、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか?主に3つのポイントに分けて解説します。

建築プロセスの効率化とコストダウンが可能

おおまかな建築のプロセスは、上流の企画設計・基本設計から、下流の実施設計・施工、そして営業という順で進みます。

建築士は、自身の設計を元に作られたVRモデルによって、企画段階から空間のデザインやサイズ感を直感的に理解できます。そのため、内観・外観のスピーディな改善が期待できます。

その後も、各プロセスでの情報共有が容易になり、関係者が物理的に離れていてもリモートで利用できるのが大きなメリットです。リアルなVR環境を作成することで、施主を建設予定の空間の内部へと案内できるため、モデルハウスも必要ありません。つまり、大幅な作業プロセスやコミュニケーションの効率化とコストダウンに繋がります。

建築士と施主のイメージを一致させやすい

3Dモデルが普及する以前の建築士は、提案書や透視図、模型などを用いて、建設予定の建物のイメージを施主とすり合わせていました。しかし、専門家でない施主からすると、図面や模型だけだと完成形のイメージがしづらいのが難点です。

結果的に、施主が納得しなければ作業の手戻りが起きたり、最悪の場合は完成後に「やはりイメージと違った」と後悔するケースも起こり得ます。

一方、完成形に忠実なVRモデルを活用することで、こうしたリスクを極力防ぐことができます。部屋の広さや天井の高さ、壁や床の色などの細かいイメージが施主に伝わり、具体的な要望を聞くことができたり、意見のすり合わせをしやすくなるのです。

災害に対応するシミュレーションができる

建築には、建設中の事故(労働災害)や、建設後の洪水・火事・地震などの「災害」がつきものです。災害を未然に防ぐにはシミュレーションが不可欠となりますが、現実世界で災害を再現するのは難しいでしょう。

そこで、こうした危険な状態をVR環境で再現できれば、現場で事故が起きやすいポイントを探したり、災害が起きた時に近い状況を体験することできます。したがって、建設が実施される以前から、具体的な事故防止策や避難計画を立てられるのです。

建築業界でVR技術を活用した場合のデメリットは?

建設業界でVR技術を活用するデメリットは、主にコスト面の問題が挙げられます。

まず初期費用として、HDMの購入や、コンテンツを使用するためのシステム開発にもコストが発生します。パノラマ写真をVRコンテンツとする場合は、360°撮影用のカメラが必要です。

また、通常の3D CADデータやBIMでVR体験ができるように編集を施すとなると、専用のソフトウェアと技術者が必要です。VRを使用することで削減できるコストと、VRを使用することで発生するコストのバランスを考えるべきでしょう。

コスト面以外のデメリットをあげると、VRコンテンツ利用中の酔いやすさについて理解しておく必要があります。VR映像は臨場感や没入感が高いため、人によっては気分を害するという点には注意が必要です。

建築×VRの活用事例を紹介

では、建築業界でVR技術の活用を実用化した事例を見てみましょう。ひとつめは住宅販売の観点から、ふたつめは災害シミュレーションの観点から代表的なサービス・システムを選んでご紹介します。

リモート住宅展示販売システム「超建築VR」

株式会社クリーク・アンド・リバー社が開発した「超建築VR」とは、展示場やモデルルームを使わず、VR空間でハウスメーカーや工務店などが顧客に住宅をプレゼン・販売できるサービスです。

ハウスメーカーや工務店が、場所を選ばずで顧客にVR空間で建物内を案内したり、住宅購入希望者と建築士が直接設計相談できたりするなど、販売者・購入者・設計者それぞれにメリットをもたらします。

災害事象の統合VRシステム「maXim(マキシム)」

株式会社竹中工務店が開発した「maXim(マキシム)」とは、地震・火災・津波など複数の災害の予測や、その際の避難行動の解析結果を統合し、VRによる事前体験を可能とする災害事象の統合VRシステムです。

各災害事象の解析結果をドーム型スクリーンやVRゴーグルなどのデバイスで可視化することで、複雑な災害事象をリアルに把握したうえで防災計画の検討などが行えます。

VR技術は建築業界の可能性を広める

今回ご紹介したように、建築とVRの組み合わせが役立つのは、住宅販売・現場作業・災害対策など多岐の分野に渡ります。VR技術はこうした分野において効率性や安全性を高め、建築業界の可能性を大いに広げてくれます。

空間設計を主とする建築の分野だからこそ、VR技術は必要不可欠な技術であり、これを応用した技術・手法には今後も期待できるでしょう。

Motto AR メールマガジン登録

最新情報やおすすめ記事などを、メールマガジンでお届けします。
ぜひご登録ください!

登録はこちら

Motto AR編集部

このライターの記事をもっと読む

  • twitter
  • facebook
  • LINE