多くの導入事例に一過性のブームではない着実な浸透を実感。XR総合展・夏レポート

Technology
2022.07.21 | Motto AR編集部

2022年6月29日~7月1日に東京ビッグサイトで開催された「第2回XR総合展 夏」は、最新のVR、AR、MR関連技術が集結しました。ビジネスの第一線で活用されている、また今後活用が可能なXR関連製品、サービスを数多く目にしました。現地で取材した中から、その展示の一端をレポートします。

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2022年6月29日~7月1日までの3日間、東京ビッグサイト・東展示棟にて「第2回XR総合展 夏」(以下XR総合展)が開催されました。日本最大のコンテンツビジネス総合展「コンテンツ東京」と同時開催された本イベントには、最新のVR、AR、MR関連技術が集結しました。製造、建設、不動産、医療からエンターテインメントまで、幅広い分野に活用できる製品、サービスが多数出展されました。

昨年、「デジタルツイン」「メタバース」がバズワードとなるなど、今最も注目を集めるのがXR分野です。主にゲームなどのエンターテインメントで用いられてきたVR技術も、企業のDXが進められるなか、最近ではさまざまなシミュレーションやトレーニング、オンライン会議など、ビジネスでの活用が広がっています。一方でAR、MR技術は幅広い業界において、現場とオフィス間での情報共有や作業支援、技術継承などに積極的に活用されるようになっています。

XR総合展ではこのように、ビジネスの第一線で活用されている、また今後活用が可能なXR関連製品、サービスを数多く目にしました。現地で取材した中から、その展示の一端をレポートします。

仮想空間で危険を体感して学ぶ、「安全ソリューション」

明電ソリューションシステム

明電グループの明電ソリューションシステムが出展していたのは、工場、作業現場向けの教育、訓練のためのソリューションです。仮想空間に集うことで講師と受講者が、距離を超えて参加できるだけでなく、事故など危険なシーンを疑似体験することで、安全確認などの重要度を体感できます。3軸VRシミュレータを用いて、高所作業など足下の危険をリアルに体感できるシステムも提供しており、多数のコンテンツをサブスクリプションサービスとして利用できます。

VRとARを組み合わせた実機訓練ソリューションでは、VRヘッドセット全面のカメラがとらえた実際の手元の映像と3DCGをリアルタイムに連動。クレーンのコントローラーなど専門的な機械の操作方法を、実際に実機を操作しながら仮想空間で学べる、ユニークなシステムを展示していました。

CAD、CGの知識なしに3Dモデルを生成、メガソフトのソリューション

パーツを組み合わせる直感的な操作で、空間デザイン、レイアウトができる業務用ソフト「3Dデザイナーシリーズ」手がけるメガソフトは、ソフトからワンクリックで3Dモデルを書き出し、VRヘッドセットを通して空間を体験できるソリューションを展示していました。

同社のソフトはCADオペレータやCGクリエータに頼ることなく、現場の担当者がプレゼンソフトを扱うような手軽さで3D空間を作成できるのが特徴です。各種CADデータとも連係が可能なほか、建材や住設、家具、ファブリックなど、大手メーカーの実在の製品データをもとにした5万5,000点を超えるパーツデータを、サブスクリプションサービスで提供しています。

作成した空間はVRのほかスマートフォンやタブレットでAR体験することも可能です。すでに多くの導入実績があり、住宅、オフィス、店舗、病院、工場、倉庫などの建築設計に携わる企業から、設備機器メーカー、医療機器メーカーなど、空間提案を行うすべての事業者がターゲットだと説明していました。

BIM/CIMを活用した建設、土木向けARアプリ「TerraceAR」

建設、土木業のDXを推進するスタートアップ、ネクステラスが展示していたのは、BIM/CIM(Building / Construction Information Modeling,Management)モデルを活用した、建設・土木業に特化したスマートフォン・タブレット向けのARアプリです。2点指示で位置を合わせることで、3Dモデルを現地の座標にあわせて表示、配置でき、地中などの見えない部分もARで確認できます。

掘削作業前の測量や丁張り作業時、積雪などでマーカーが見えなくなったのをARで補完し、作業を効率化した活用事例もあるとのこと。アプリは直感的に操作できるよう工夫がされていて、現場で手軽に使えそうです。

ゲーミフィケーション技術を活かした直感操作の作業支援ソリューション

ポケット・クエリーズと住友商事マシネックスのブースでは、マイクロソフトのMRヘッドセット「HoloLens 2」用の、現場支援ソリューション「Faci-L-ite XR」が紹介されていました。マニュアルや図面、作業チェックシートといった資料や、遠隔地から共有されたPC画面などをホログラムとして現場の空間に表示し、参照しながら作業ができるほか、作業員が見ている映像を遠隔地のPCに共有。音声通話のほか、実際の空間にマーキングしてもらうなどして、指示をあおぐことができます。

また現場では「HoloLens」を装着した複数人で、ホログラムをリアルタイムに操作することも可能。また「HoloLens」を装着した人が沿革から、アバターとして現地に参加することもできます。

現場の作業支援のほか、教育や技術継承でも活用できるソリューション。ポケット・クエリーズが3Dゲーム開発で培ったゲーミフィケーション技術がUXに活かされていて、現場の作業員が直感的かつ自然な動作で操作できるのが、大きな特徴になっています。

小型化、軽量化が進む、最新AR、VR、MRデバイスが集合

XR総合展では、最新のハードウェアの展示もありました。ARモジュール開発するバーインテックは、メガネやヘルメットに装着可能な高精細スマートグラスモジュール「EzARGO」を出展。すでに製造現場などで活用されている製品のほか、モジュールを組み込んだグラスのモックアップや、医療・教育分野への応用を想定した参考展示も行われていました。

またユニスピードのブースには、世界初5KのマイクロOLEDディスプレイを採用した、スタンドアローン型VRヘッドマウントディスプレイ「arpara AIO 5K」も展示されていました。パンケーキレンズを使用し、重さ380gと軽量なのが特徴です。

このほかキヤノンのブースでは、同社のMRヘッドセット「MREAL S1」を用いたソリューションを体験することができました。なかでも注目を集めていたのが3DCGと実物の部品や、力覚フィードバック装置を組み合わせて、シミュレーションや作業検証、トレーニングができるデモです。力覚フィードバック装置に、組み立て作業の際の部品の干渉などを実際の感触をリアルに再現していました。精密なシミュレーションは検証の効率化、コスト削減にも役立ちます。

NTTグループが「NTT XR」を推進する理由と最新事例

イベントの開催にあわせた特別講演では、NTTドコモと日本マイクロソフトの担当者が登壇。それぞれXR分野への最新の取り組みについて紹介されました。

NTTドコモ ビジネスクリエーション部 XR推進室長の岩村幹生さんは、「人を幸福にするのは経験。VRは経験をオンデマンドにできる」との持論を展開します。「人の幸せはコミュニティに左右されるが、メタバースではもうひとりの自分が新しいコミュニティを形成できる。我々は通信事業者であり、信頼を通わすのが仕事。デジタルソサエティで新しい産業と雇用を生み出すこと、欲望を満たし生きがいを支えること、信頼関係と人間性を育むことがしたい」と、通信事業者としてメタバースに取り組む意義を説明しました。

そのためのキーとなるのは、やはり「ユーザーインターフェイスでありデバイス」と岩村さん。今はまだ「携帯電話でいえばショルダーフォン」ですが、やがては「PortabilityとAttentionを備えた製品に進化していく。そうなれば今あるデバイスがすべて置き換えられる可能性があり、エコシステムが変わって、パラダイムシフトが起こる」と言います。

ただしそのためには、「端末技術やサイズ、3D制作、ネットワーク伝送速度や遅延、セキュリティ・プライバシー、標準化や相互接続をどうするかなど、まだ技術的チャレンジも多い」とも。NTTグループでは通信からデバイスまですべてに光技術を用いて、高速、高品質、大容量、低遅延なネットワークを実現する次世代通信「IOWN構想」を進めています。この実現により、「デバイスの性能を問わず同じ体験価値が共有できる」とのことです。

NTTグループでは「NTT XR」のブランドのもと、パートナー企業とともに幅広いプロジェクトに取り組んでいます。アバターを作成してブラウザで参加しコミュニケーションができるコンシューマー向けのメタバースや、法人向けのバーチャルイベントのプラットフォームのほか、立体スキャナーを用いてフォトリアリスティックなアバターを生成して参加するオンライン会議や、人の表情をアバターに再現する技術といった事例も紹介されました。このほか「NTT XR」の最新の取り組みは、ホームページで確認できます。

NTT XR

マイクロソフトがMRで目指すコラボレーティングコンピューティング

日本マイクロソフト Mixed Realityマーケティング プロダクトマーケティングマネージャー 上田欣典さんの講演では、マイクロソフトのMixed Realityの現状が紹介されました。MRヘッドセット「HoloLens 2」では、現実世界に3Dのホログラムを、さもその場にあるかのように見せることができます。多数のセンサーがリアルタイムに環境を認識して、リアルなホログラムを表示するしくみで、製造業をはじめ、医療や建築、教育など、幅広い企業で導入されています。単に導入されているという段階ではなく、「すでに実証実験を経て、導入の効果も出始めている」と言います。

マイクロソフトでは「HoloLens 2」だけでなく、アプリケーションやクラウドサービスなどにも、Mixed Realityのポートフォリオを拡充。これらの組み合わせでどんなことができるのかの一連として、「HoloLens 2」とMicrosoft Teamsを使った遠隔支援の様子もデモンストレーションされました。

すでにMRを活用することで、遠隔支援や教育業務の効率化に成功している事例もあるとのこと。MR技術を用いて、双方向な3次元オンライン診療システムを構築し、難病患者さんをサポートする事例も紹介されました。またマイクロソフトが開発を進めている複合現実プラットフォーム「Microsoft Mesh」を使って、離れた場所にいる人同士がアバターなどを通じて同じ空間に集うデモンストレーションも実施。オンラインでのコミュニケーションやコラボレーションに、「Microsoft Mesh」を先行導入している企業の活用事例も紹介されました。

XRは法人向けサービスが今後しのぎを削る時代に

今最も注目を集める分野だけに、多くの来場者で賑わったXR総合展。VRを筆頭にXR=エンターテインメントというイメージがあるかもしれませんが、実際には出展の多くは法人向けであり、VRやAR、MRの業務への活用で、企業のDXを後押しする製品、サービスが中心です。各出展ブースでは、多くの導入事例も紹介されていました。まだ先進的な一例かもしれませんが、企業でのXR活用は着実に進んでいる。そう実感することができました。

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